ピアス
この春はピアスを開けるつもりでいた。
この話をすると大抵は2パターンの反応をされる。
①「あれ、開いてなかったけ」
②「なんで今更?」
①開けてなかったのには理由がある。
単純に自分の耳を気に入っていたのだ。全身の中でもいちばん。
だから穴など開けたくなかった。
客観的に見てどうこうという話ではなく、私はずっと私の外見を気に入っていない。
ある程度は金と手間をかければ解決できるのでは?と思い立ち、一度頭の先から順にどうにかしたいことをリスト化していったら、首の下に行くまでに20を超えそうになって断念したことがあるくらい。(そのことをtwitterでつぶやいたら、なんでそんなつらいことを・・・とswimmyに言われた。本当よね。)
なんとなく自分の内面とうまくマッチしないのだ。この外側。
とはいえ30年付き合ってきたわけだからなんとかしっくり来るように変えられるところは変えてきて今がある。
一番変えやすいのは髪型で、特別な事情のない限りしばらくショートヘアにしている。
長い方が男性受けはいいので勧められることも多々あるが、自分と一番付き合っていかねばならないのは自分なので、無視。
そこで②なんで今更?である。
まあそう思うよね。ピアスを開ける側の人々は大体10代のうちにクリアしているハードルだし。ここまでなしで済ませてきたものをなぜ今更?と。
これは単純に加齢によるものだ。
20代半ばくらいまではあってもなくてもよかったイヤリングが、最近はなくてはならないものになってきたのである。
毎日見ているから劇的な変化は見て取れないものの、2・3年前の写真を見ると若々しく思えるのだから老いというのは不思議だ。
なんとなくハリを失った肌とやや薄らぼんやりした顔面を引き締めるのに、ある程度エッジのあるイヤリングが必需品になってきたのである。
もちろんあらゆる美容的手段と日々の研鑽(金と手間)を積んで、なしで済むクオリティを保つ努力ができればそれに越したことはないが、こちとらそんなガッツはない。貴金属に頼れるもんなら頼りたい。
さらにたちの悪いことには、若さのマジックが効かなくなった肌というのは合わせるものの素材の良し悪しを如実に反映する。プチプラのトップスが似合わなくなったり、安い靴が貧乏くさく見えたり。アクセサリーもそれが顕著で、安いものはもう、そのまんま安い。
とはいえイヤリングとピアスとでは使っている金属の量が全く異なるため、エッジのある大ぶりのもので、ある程度の素材のものだとイヤリングだけなかったりするのだ。あっても妙に高かったり。その上なくす。イヤリングはなくす。落ちるし。
なんかもうここまでくるといいじゃないの。加齢と経済的事情が合わされば概ね諦めもつくので、ピアスを開けるのが趣味だった友人(子持ち)に開けてもらう口約束をしていたところの、コロナである。不要不急甚だしいのでなんとなく話が流れてしまい、未だ私の耳はそのままの姿を保っている。
うるせえな自分で開けろよ。という話になってくるが冗談じゃない。
怖い。怖いに決まっている。
こちとら死ぬことより痛いのが怖いタイプの人間だ。
穴なら体に無数に開いているが、貫通はしていないのだ。
それを未経験の人間がやるなんて空恐ろしいにもほどがある。
せめて経験者にやられたい。ひと思いに。
怖気付いて延期していたところ、夏になると化膿する可能性が高いと脅され、自分で開ける方向でも検討してみる。化膿は嫌。痒いもん。
多くの人の体験をインストールすれば、なんかもう耳年増っていうか、すでにやった気になって大丈夫なんじゃないかな、と考え、
「ピアス 一人 開ける」
などと検索する。
が、
違う、私の知りたいのはそれではない。
ハウツーが欲しいんじゃないのだ。いやそれも必要なんだけど、そうじゃなくて。
なんていうかまさに自分が体験したかのような気持ちになれるような臨場感ある穴あけ現場体験記が欲しいのだ。目をつむっている間に終わったとか、ばちんと音がしたと思ったら開いてたとか、その程度の話じゃなくて、せめて5w1h。状況を克明に想像させてくれ頼むから。
当然そんなものは都合よく見つからず、私の耳は未開通のまま、開けたらどんなピアスをしようかな〜などという妄想だけを持って時は過ぎていく。
誰かリアルな耳穴開通体験記と、そこそこの値段でエッジの効いたデザインのピアスのブランドを教えてください。10万円の一部を投入するんで。(ゴールド系希望)