交換雑記

交雑してます。6人くらいでやっています。

サイノメギリ

子どもの頃、サイノメギリが怖かった。

サイノメギリ、豆腐のアレである、賽の目切り。


母と暮らした記憶はごく少なくて、その中でなぜだろうか覚えている。賽の目切りの思い出。


大体は味噌汁を作っているのを横で見ていて、柔らかい豆腐(木綿派だった)を濡れた手の平に乗せ、ス、と包丁を入れていく。


縦に、横に、何度も。


目を覆うようにして見ていた。横で何度も、

「手、切れない?」

「痛くないの?」

と聞いた。


「痛くないよ」

「引かなきゃ切れないんだよ」

少し面倒そうに、でも都度律儀に答えていた母を覚えている。

「お尻はみんな横に割れてるんだよ。縦に割れてるのははるかちゃんだけなんだよ。」

などというくだらない嘘を私が泣くまでつき続ける人だったのに、律儀さの出方が謎な人間だった。


サイノメギリ、大人だからこそできる技みたく思えて、怖かったにも関わらずなるべく見に行っていたなあ。


ひとりで食べるための味噌汁(絹派)を作るとき、いまやなんの恐れもなく手のひらに包丁を突き立てながら、息をするように毎回出てくる思い出。

みんなのそういうものって何かあるだろうか。聞いてみたい。