あなたは何て呼ぶ?
振り返ってみれば何も考えていなかったことに気づく。
ありがたみは失ってから気付くとはいうけれど、取り返す事も出来ず、後悔を他の何かに昇華することも出来なければ、気持ちは行き場のない袋小路で立ち行かなくなり、小さく小さくうずくまることしか出来ない。
薄汚れた子猫のように雨に鳴けどその声は届かない、誰も救えない、その姿は哀れ。
しかしそれだけだろうか。
そこには確かにあったんだ。
形もなく、匂いもなく、音もしない。
触れることすら叶わず、存在の痕跡はなく、誰にも見えなくても、思い出の中にだけその姿を認める事が出来た。
時を経て薄れ、曖昧でぼんやりとした輪郭だけが残る。
詳細を欠けデフォルメされたそれは、ただただ無駄がなく、そして美しかった。
僕はそれをーーーーと呼ぶことにした。