育て親のおばあちゃん
僕にはおばちゃんとおじいちゃんが3人ずついる。
父方の祖父祖母、母方の産みの祖父祖母、そして母方の育ての祖父祖母。
母は養女だった、よくある子沢山の田舎農家から裕福な都会の子なし夫婦に出された養女。
一見複雑そうな家庭事情かと思うかもしれない、でも僕にとっては祖父母が6人いるのは世界の常識で、何も特別なことはなくて、お正月にはお年玉が貰える人数が増えてラッキーってくらいにしか思ってなかった。
ただ周る家が多くなるから、いつも母方の産みの親の家に滞在する時間は短かった。
ある日、母方の育て親であるおばちゃんが家に来た。育て親のおじいちゃんが亡くなってしばらく経った後だった。
僕は当時小学生低学年くらいで、新しい家に引っ越して自分の部屋をもらって嬉しくて、当時好きだったガンダムのプラモデル(ガンプラ)を閉め切った部屋で塗装に没頭してたらシンナー中毒になりかけて親に怒られる、軟弱なコロコロより硬派なボンボン派を自称する、そんな子供だった。
家に来た祖母はヨボヨボで、足が悪くて、僕ら(3兄弟)は家に入る祖母を階段の上から遠回しに眺めていた。
特に嫌悪感とかそういうのはなかったんだけど、家の中に異物が入り込んできた、当時はそんなしっくりこない感覚でいたように記憶している。
僕は小学校から帰ってくると祖母の部屋には極力近寄らず、自分の部屋あるいはゲーム部屋でもっぱら過ごしてた。
喋った記憶も一緒にご飯を食べた記憶もあまりないけど、時たま母親に促されて祖母の部屋に行き、ベットに横たわる祖母の隣で学校について質問されたことを答えていたことを覚えている、祖母は僕と会話できて嬉しそうで優しい笑顔をしていた。
少し経って祖母は入院し、そして帰ってこなかった。
葬式の時、母はひどく悲しみ、泣いていた。
それから何年か経ったある日、僕はもう何年も母方の産みの親の家に行っていないことに気がついた。
僕は母に、産みの親の家には行かないの?って聞いた。
母は、もう行く必要がないのよって少し寂しそうにそして少しスッキリとした顔で答えた。