交換雑記

交雑してます。6人くらいでやっています。

天才を殺す凡人

 

普段ビジネス書の類は読まないんだけど、ディーさんに勧められてこの度読んだので、感想と自分の仕事の話をしようと思う。Yさんも面白いって言ってたし、左ききのエレンの作者と対談もしてたしな。

 

端的に言うとめちゃくちゃ面白かったです。内容は大体こんな感じのことを説明してるんだけど、ほぼ全編ストーリー式。

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この三者がどういう関係にあってどう補完しあうかみたいなのが主題。

なんでお互いが分かり合えないのか、どのタイプがどのタイプに助けてもらうといいのか、どうしたら協力を得られるか、みたいなのがはっきりと言語化されてて、しかも難しくなくて2時間かからず読めてしまう。読後感も爽やか。

 

で、一方で自分にはちょっと早かったというか、この本の良さを生かしきれるステージにいないな、と感じたりしました。参考にならなかったわけではない。ちょっと長いけど自分の仕事の話をするね。

 

私の仕事は工芸の世界で、自分の器を作って販売すること(請負もやるけどそれはひとまず置いとく)で、器のデザインから自分で考えて、分業を経て、最後は自分で展示会やなんかで販売しています。

ものを作るって時点で創造性(この本で言う天才の分野)を試されると思われがちで、それはある程度はそうなんだけど、美術の中でも工芸はイノベーションの起こる可能性が極めて低い、というよりほぼ起こりえない。イノベーションを起こした結果が工業製品であったりするからね。

素材や技術に重心を置くから、古きを守ることにどうしても傾いていく。効率化は必要でも手仕事の領分を守らねばならない。

奇抜なデザインの器なんて使いにくいだけのことが多いから、どちらかというと技法の組み合わせの妙であったり、いかに昔の名品を勉強してモノを作るかが大切で、何なら名品の写しだけ作ってても全然アリな世界なの。

もちろん新たな表現を模索する現代工芸って呼ばれる分野もある。乱暴に分類するとその対極が伝統工芸で、人間国宝とか出てくるのはそっちの世界。私がいる使う器の作り手の世界はその中間、ってイメージなんだけど、どのみちこの本で言うところの秀才=再現性の分野なんだ。

よく産地では作家か職人か論争みたいのがあるんだけど、私はそれは創造性の有無じゃなくて、再現性の有無だと思ってるの。職人=再現性。じゃないと単価出せないからね。そのための修行だし。

だから芸術って言われると違和感あるし、自分の作ったものを作品とは絶対言わない。品物って言ってる。

 

とはいえもちろんデザインする上で創造性が必要にはなるし、使うものだから共感性も必要で、宣伝販売では特に大切。その時々で自分の中の天才秀才凡人を転がしていくしかない。きっとどんな仕事もみんなある程度そうなんじゃないかなとは思う。就職したことないからわかんないけど。

 

じゃあこの本をどう役立てるか?って話になると人に助けてもらう時、自分に何が足りないかを自覚して動いてく時。自分は何者なのかを当てはめて考えてくことになると思うんだけど、そもそも私は全部一人でやってるせいで自分がどのタイプなのかわっかんないんだよね、、、

 

得意不得意がわかるほど経験値重ねてないし、技術とは別の面での再現性、つまり私のやり方を言語化して、それが再現性を伴っているかは、弟子取ってみないとわかんないし、それすら一人でできる気はしないもんなあ。

 

つくづく人は社会性の生き物だって実感するよ。

今この状況で、今後こうしていこうみたいのもあるんだけど、まず一人でやらなきゃいけないことが多すぎる。助けてもらうステージにさえ立ってない現状を改めて突きつけられた感じ。

 

でも近いうち絶対岐路には立たされて、この本が必要になる時はくるんだろうなって気はしてる。

だから読んでよかったよ。

 

みんなはどういう風に自分に当てはめてこの本を読んだんだろう。差し支えない範囲で聞きたいな。

しかし仕事の話すると長いわ。